不思議にひと触れ

Kis-My-Ft2とその周辺について

横尾さんの10000字について《私にとってのアイドル》

MYOJO12月号のみっくん(北山宏光)回を以って、キスマイの10000字インタビュー第2弾が終了した。

この企画の魅力って、やっぱりアイドル1人に対してのインタビューとしては格段に長い文字量だと思う。もちろんあそこで語られている事が彼らの全てだとは思わないけれど、10000字というボリュームの中では、彼らが普段の活動の中ではなかなか改まって言葉にする事のない、自分達の現状に対する認識や葛藤、アイドルとしての矜持や目標、そしてひとりの人間としての感情の揺らぎのようなものを何となく感じる部分もあって、7人それぞれ興味深く読んだ。思うところは皆に対して各々あったけれど、今回はその中でも特に私が好んで応援させて頂いているメンバー、横尾渉さんのインタビューについてつらつらと書いていきたいなーと思います。

 

今回の横尾さんの10000字インタビューは、読めば読む程、どうして自分が横尾さんのファンになったかをつくづく実感するような内容で。読み終わったあと前回の10000字もたまらなく読みたくなって、思わず本棚の『裸の時代』を引っ張り出してきてしまった。

私が横尾さんのファンになったきっかけは幾つかあるけど、その中でも、書籍『裸の時代』(しかしスゲー題だな…)にもまとめられた前回の10000字インタビューを読んだ事はかなり大きい。

キスマイにはまる前、私はアイドルの方々に対して「ハッタリがうまい人達」という印象を持っていた。(すみません…今はきちんと実力に裏打ちされた優れたパフォーマンスをされる方も数多くいらっしゃるという事は重々承知しております…。) 本職の歌手やダンサーほど歌やダンスのスキルが高いわけではないけれど、力が足りなかろうが多少失敗しようが、いざ人前に出たらハッタリかまして「それが何?」って顔して、にっこりと微笑んでポーズを決める。その姿には、実力だとかレベルだとかはよく分からないけど、圧倒的なファンの歓声の大きさも手伝って、有無を言わさぬ旬の勢いと輝きがあり、見ているこちら側も「これもアリなのかな」ってなんとなく納得させられてしまう。当時はその姿にどこか実体がないような気がして釈然としない部分もあったけれど、夢や憧れを提供すべくアイドルには、かりそめでも自分に暗示をかけて胸を張って人前に立つという、そういった舞台度胸が必要というのは今では何となく分かる。ステージ上で自信を持って立っているか否かは、たぶん子供が見てもある程度は分かるんじゃないかと思う。「俺を見ろ」という意識で立っている人には独特の迫力があり、やはり目を引く。根拠なき自信でも、やり続ければいつの間にか本物のオーラに変わるという事はよくある話だ。

でも横尾さんはそういう姿勢とは対極にあって、自分が楽しい時にしかほぼ笑わないし、振付を誇張するような動きをしたり、過剰な自己アピールや自分を実力以上に大きく見せようとしたりという事をとんとしない。
パフォーマンス面でもそうだし、出演番組でもそう、インタビューに至っては、大きく出るどころか必要以上に自分を卑下する有様だ。(あ、これ、私がファンになった当時の話です。今は大分変わってきた部分はあるかと思います。)
彼がなぜそういう「…ホントにアイドルなんスよね?」的性質になっていったかについては、前回の10000字でそれはもうたっぷりと語られていて、その内容は他グループも含めて10000字インタビュー連載史上最大の反響(多くは非難・酷評)を巻き起こしたという訳なんですが…。

でもね、あの当時キスマイというグループに興味を持ち始めつつも、一部のスターを除いてどこかまだアイドルという存在に懐疑的だった自分にとって、あの横尾さんの10000字インタビューは、まず人としてすごく共感し、それまで自分が持っていたアイドル観をがらりと変えるようなものだったんですよ。

自分に自信が無くて、周りの仲間と同じようには希望や志を持てなくて、真っ直ぐな心持ちで他者や仕事に向かっていくことが出来ない、そんな自分が後ろめたくて堪らなくて。でも、そういう自分が所属する、タレント・スタッフ始め立場を異にする人びと皆で一つのものを創り上げていくエンターテイメントの世界が、尊敬する先輩や気持ちを分かち合える仲間がいるジャニーズの世界が、大嫌いで大好きで愛着がありすぎて、自ら辞める事も出来なかった。だから、最後の最後でアイドルという道を選び、批判覚悟で今までの思いを吐き出した上で「これからの自分を見て下さい」と言った彼に、私はすっごくグッと来たんだよね。
こういうこと考えながらアイドルやってる人がいるんだ…!って目から鱗で、(否定的な意見を持つ方に対しては不謹慎かもしれないけど)こういう人がいるんだったら、なんか思ってたよりアイドルっていうフィールドの懐は広く面白味のある世界なのもしれない…と、がぜん興味が湧いた。
そして、頑なでシニカルなタイプかと思えば末っ子体質の人たらし(動物たらしでもある)、しょっちゅう緊張で震えちゃう位あがり症かと思えば上空3800mからのスカイダイビングは大ノリで誰よりも楽しんじゃう、歌やダンスがいまいち苦手な不器用アイドルかと思えば異様に料理上手だったり、侘び寂びまで漂わせる味わい深い俳句を詠めたりで、「こういう人なのかな」って思ってると、エ⁉︎そう来るの⁉︎っていう事の連続で、見ていてホント飽きなくて。手脚の長いスラリとした体型や端正な辛口大人顔という私のどストライクな外見も相まって、いつの間にか深くて底知れない横尾沼へとはまっていた訳ですね…


こちらの期待を何もかも網羅してくれるパーフェクトアイドルではない。穴や弱点を目にする事も色んな場面である。だけど、彼が持つ不完全さは時に、絵に描いたような完璧以上にグッとくるものがあって、ハッとするようなきらめきや、不思議な味わい深さを見せてくる。それは、私にとって何物にも代えがたい魅力なんですよね。

きらびやかな衣装を身にまとい、歌って踊って笑顔を振りまく、そういうのがアイドルだと思っていた。でも多分、それは彼らの姿のひとつで、歌もダンスも演技もバラエティも、何をするにもまずその人がやるから見たい、その人だから見たい、とファンに選ばれる存在がアイドルなのかもしれないと今は思う。秀でた特定のジャンルに特化した歌手、俳優、芸人さん等とは異なり、まずその人自身の容姿・雰囲気含めパーソナリティやキャラクターの魅力が真っ先に求められる職業。そういう意味では、横尾さんが横尾さんであるということに日々魅了されている私にとって「横尾渉」という人はこの上なくアイドルなんですよね。

今回の10000字を読んで、横尾さんもキスマイも、今後は選ばれたこと…デビューさせてもらった事、ある程度集客力を持つグループになった事、に対しての根拠を証明していく時期へ本格的に差しかかっているんだろうと思った。そして、もっともっと多くの人に選んでもらえるように、よりグループとして大きく確かな存在になっていく為に、誰の目にも認めてもらえるような説得力を打ち出していく。今回の10000字を読むと、そこの部分を見据えた発言がかなり見受けられた気がする。

横尾さん個人のことを言うと、いまだ迷いや葛藤も抱えているのは伺えるし、相変わらず歯に衣着せぬ、かなり身も蓋もない言い方をしている部分もあるけど、でも全体的には前回よりもずっと前向きで、落ち着いた視点で物事を見ているなと感じる。いい意味で図太く、しなやかになった印象を受けたし、何よりメンバーに対して、甘くはないけど、ずっと目線が柔らかくなり、寄り添うような言葉が並んでいるなと思った。

 

人生には色んな選択があるし、何が起こるか分からない世界だけれど、私はキスマイを見るのが好きで、Kis-My-Ft2の一員である横尾さんを見るのが大好きなので、今いる場所とお仕事に愛と誇りを携えて、模索しながらも自分なりのアイドル道を突き進んで行って貰えたら嬉しいなと思います。
アイドルという職業を選んでくれてありがとう。Kis-My-Ft2でいる事を選んでくれて、本当にありがとう。